【集客・売上げアップ】「黒部ダム」

年度:2005〜2018年度
業種:「黒部ダム」(観光地事例)
ご相談内容:観光客の動員数が減少。落ち込む前の水準まで回復させたい。
成果:クロスメディアプロモーション奏功。施策4年で観光客150%増加。

ご相談の背景

2004年当時、観光客の減少が続いていた黒部ダム。
景観の訴求に注力しようとオフィシャルの写真を年間通じて撮影されていた中、担当者の方が、直接ご相談に訪れました。

黒部ダムは建設当時の様子がテレビ番組で特集されたり、かつては映画化もされ、全国から観光客が押し寄せていたが、近年減少傾向に歯止めが掛からない。
今後このまま減少傾向が続けば問題は深刻化するばかりで、何とか観光客の減少に歯止めをかけ、落ち込む前の水準まで回復させたいが、具体的な施策がまとまらない。

観光シーズンになれば、少なからずテレビなどの取材はあるものの、それだけではPR効果は見込めないと感じている、直接運用出来るメディアはホームページしかない。
そのホームページもパンフレットを焼き直したくらいにしか出来ていないが、限られた環境下で何とか有効なプロモーションを打てないだろうか。

見えてきた課題

  • 黒部ダムの基本的な知名度
  • 黒部ダムの観光ポイント、訴求ポイント
  • 現地までの導線、アクセス環境
  • 周辺地域の観光資源
  • 現状のPR・メディア
  • 各メディア取材時期や放送、配付時期、範囲
  • 観光客の属性(嗜好、性別、年齢層、居住地域など)

当然のことだが、現地を知らなければ有効なプロモーションの施策は見えてこない。

基本的に新規顧客獲得が観光客増員の鍵となるのが「現地集客」のプロモーション。特にリピート率が低いほど新規顧客の獲得は重要な施策となる。

パンフレットを焼き直しただけのホームページは、情報量も少なく、若年女性をターゲットにしたコンテンツも、観光動機の誘発には繋がっていないと判断。
唯一運用が可能なWebメディアとしては有効に機能していない状態がうかがえた。

Webコンサルタントからの提案

まず、写真やパンフレットなどの手元資料をベースにしてホームページの形に置き換えただけでは、根本的に目標達成は不可能であることを説明し、前提となる基本条件を即日提案しました。

現地取材の重要性

観光地や観光施設など、そこに集客がなければ売上げが見込めない「現地集客」のビジネスモデルでは、徹底した現地取材の体験に基づく情報整理とコンテンツ化が重要であり、プロモーションの基本となる。
実際に足を運ぶことで現地までのアクセス手段、動線、移動時間、周辺の環境などを具体的に知る事ができ、そこを訪れている観光客の属性も知る事ができるからである。

もちろん取材行動そのものが、自ら観光体験者としての立場も合わせ持つことになる。
ヒアリングから分析して、少なくとも6〜8名のチームで7日以上の取材期間を要すると判断し提案。

現状のPR状況とメディアの分析

少なくとも観光客の動員数が増加から減少に転じた年度まで遡り、現状までのPRとメディアを分析することで、観光客減少傾向とメディアの関係性が見えてくる。

また、年度を遡り、競合観光地の存在やトレンドの変化なども検証し可視化していくことで、現地の認識と顧客とのズレを客観的要素として資料化できる。

現地取材と合わせてこのズレを確認するため、現地の主要な各担当者を召集しヒアリングによる意識調査を行う。

4年間の経過観察とPDCAを実施する

今回のような大規模観光集客案件では、観光客の動員数や増加目標から計算しても短期的に回復を可能とする施策の実施は困難である。

観光シーズンなども考慮して、プロモーションの実施時期、浸透期間、誘客までの反映を逆算していくと、少なくとも4年は期間が必要と判断。
相談を受けた2004年から準備を始めるなら、2008年の観光シーズン終了時点で、観光客の動員数を見て回復度合いを判断していてだきたいと提案。

Webサイトの役割と機能

ホームページ制作の枠を越えた総合的なクロスメディアプロモーションとなり、現地で関わる方々の意識改革や取り組みへの協力は不可欠であり、それをなくしてメディアでどれだけ情報化を進め、コンテンツとして露出したところで成功はあり得ません。

もちろん黒部ダムのホームページは取材、調査、分析を元にして継続的なプロモーションが可能なプラットフォームの機能を持たせて企画制作することになります。

プロモーションの方向性から判断すると、黒部ダムの観光情報、施設としての基本情報に加えて、広報の機能も兼ね備えたオフィシャルサイトとして基本設計を行う事が必須となり、速報性も意識したシステム構築も前提となりました。

Webサイト企画制作のために実施した施策

ホームページをクロスメディアプロモーションのプラットフォームとすることを前提に開発するため、現地取材、資料分析、制作班など基本的な要員として4名のスタッフを召集しました。

クライアント担当者には、現存する黒部ダムに関連した一般資料、PRメディアに関連する資料を提出していただき、その量は当時拠点としたオフィスの一室を埋め尽くしました。

資料を年代や内容で分類して、概要をパソコンに入力し、基本的なデータベースを作成。
当時は紙媒体の資料が多く、主要な文章、写真のデータ化も含めて行いました。
制作に関わるスタッフが基本情報の整理と共有を行うのは、その後の企画制作を進める上でも重要です。

14日の徹底的な現地取材

整理した資料から、実際に取材で深掘りするための要素を洗い出します。この時点でも現状のパンフレットやメディアでは注目されていなかった観光資源や見どころなどに気が付くことができるのです。

このプロジェクトでも黒部ダムの観光資源として注目したのは、長野側入り口から黒部ダムまで観光客を運ぶ「トロリーバス」です。当時日本ではここにしかない乗り物でした。

制作スタッフはまず、国内観光客の主要動線を検証するため、大阪、東京から現地まで向かうチームに別れて移動します。それぞれの出発点からは電車、バスなどの公共交通機関利用とマイカー組に別れて黒部ダムに向かいました。

現地の拠点として、長野道「豊科IC(現在は安曇野IC)」大町市駅、富山県の立山など、アルペンルートも含めた動線や周辺観光地、施設、グルメ、体験なども総合的に取材対象としました。

黒部ダムの通常観光ライン、ダムとしての役割や歴史にまつわる関係施設、バックヤードまで徹底的に取材を行いました。

オフシーズン、オンシーズンに分けて延べ14日。総動員数は現地関係者を含めると100名以上の協力得て現地取材が完了しました。

プロモーションを可視化する「遷移誘導図」を開発

膨大な資料整理と徹底した現地取材、これまでの広報、PRの流れと今後のプロモーションの方向性まで考慮して、黒部ダムのオフィシャルサイトに落とし込まなければなりません。

観光情報コンテンツが主となるWebサイトの中に、機能的なプロモーションラインを組み込む必要があります。そこで各メディアからの流入と、Webサイトのコンテンツと役割、プロモーションの流れを可視化するための「遷移誘導図」を開発しました。

黒部ダムのWebサイト制作では、一般的なサイトマップ以前にこの「遷移誘導図」が設計の基本となりました。

Webサイトの企画と制作

黒部ダムのプロジェクトでは、現地取材を反映してWebサイトの企画書をまとめるという進行でした。

単なるホームページ制作であれば、原稿と素材を平面的にデザインして、htmlにすればいいのですが、今回のWebサイトは観光地である黒部ダムのオフィシャルサイトとして、多元的な役割を備えなければならないため、取材成果から発案したコンテンツ案と、遷移誘導図を根拠としたプロモーションプランも含めて企画書に落とし込みました。

畳4枚分の遷移誘導図と80ページの企画書

クライアントへ提案する際には、図にある文字が読めなければなりません。しかも紙面で提出しなければならないという条件もありました。

そこで大型の出力機器を導入している工場にお願いして出力し、何枚かに分けて印刷したものを貼り合わせて一枚にまとめると、畳4枚分ほどの大きさになりました。

企画書では、Webサイトのコンセプトや機能説明、役割、コンテンツもその目的と役割まで含めて詳細な説明が必要でした。

また当時はホームページとして出来上がったときに、実際にどのように見えるかまでを具体的にデザインレイアウトまで落とし込み、ほぼ完成状態を確認してからhtmlにしていくという進め方が求められていたこともあり、企画書はA3サイズで80ページとなりました。

PHPが使えない環境下でのWebサイト設計

プロジェクトが承認され、契約段階で明らかになったのが、指定されたサーバでPHPが使用禁止されているという致命的な事実でした。
PHPはWebサイトに動的な機能を実装する上では外せない基本中の基本。それが使えなかったのです。

担当者さんにも、Webサイトが果たすべき機能については事前に説明していましたが、ご本人もサーバの仕様や社内の規定でPHP禁止というところまでは知らず、またPHPが今回のWebサイトではマストであるということも知るよしがなかったのです。

しかし一番頭を抱えたのは、基本設計の段階からPHPは使えて当然と思っていた制作チームでした。
制作スケジュールも既に決まっており、何とかしなければなりません。悩みに悩み、あの手この手を考え、他のscriptやFlashなどにも置き換え、FTPクライアントまで自作して乗り切りました。

2005年7月。「黒部ダムオフィシャルサイト」リニューアル公開

担当者さんからのご相談、基本提案から、資料分析、初期取材、企画制作まで実に11ヶ月。ようやく黒部ダムオフィシャルWebサイトをリニューアル公開しました。

黒部ダムオフィシャルサイトは巨大建造物としてのダムの紹介だけでなく、黒部湖を運航する遊覧船、記念写真の撮影ポイント、散策道でのトレッキングなど、体験や楽しみ方を観光ガイド風にコンテンツ化しました。
それだけに留まらず、四季折々にその表情を変える大自然や、富山県側からのルートとなる立山黒部アルペンルート、長野県の周辺地域の見どころや食事処、宿泊施設、主要都市から現地までの詳細なアクセス情報などまでを網羅した、ボリューム感のあるWebサイトに生まれ変わりました。

Webサイト公開後の成果

公開後はWebサイトの効果測定を行い、Webサイトとしての向上も含めて、クロスメディアプロモーションのプラットフォームとして機能させるためにPDCAを繰り返し実践していかなければなりません。具体的には公開後4年間、下記のような項目でプロジェクトに取り組むこととなりました。

  • Webサイトの実運用(広報、コンテンツ更新)
  • アクセスログ解析
  • 定期的なサイト分析
  • 他メディアとの連動企画・監修
  • 他メディアからの流入誘導企画
  • イベント企画・コンテンツ企画
  • 年度後の取材・調査・分析
  • 年度毎のWebサイト分析及び改修

公開後1ヶ月で訪問者数が約150%アップ

リニューアル公開から一ヶ月後のアクセス解析で、前年同期比でPVは約120%、訪問者数は150%アップを記録しました。

アクセス数の増加要因はログを見て明確になりましたが、長野、富山、周辺の観光情報まで裾を広げて黒部ダムのある地域や楽しみ方を訴求した手法が功を奏したのです。

これまで無関係だったキーワードからのアクセス増加

既存資料や取材を通して、今まで黒部ダムを知らなかった層にも認知を広げるための地域情報、名産物など、新たな観光資源となるであろう、黒部ダムの見どころや特徴、体験などが見えていました。

その一つが、日本で唯一ここだけで運航されていた「トロリーバス」略してトロバスです。(現在は廃止されて新しい電気バスが導入されています)

このトロバスにフォーカスしたコンテンツを一から企画制作して、黒部ダムの特色として紹介した結果「トロバス」や「トロリーバス」で検索すると黒部ダムオフィシャルサイトが常に上位表示されるようになりました。

今までは黒部ダムとは無関係だったキーワードからもアクセスが増加し、黒部ダムを知らなかった人にも、トロバスをきっかけにして黒部ダムを知って貰うことができたわけです。
このほかにも「ダムカレー」「くろにょん」など黒部ダムのプロモーションではB級グルメやゆるキャラなどもプロモーションにいち早く活用して、新たなキーワードからのアクセス獲得に貢献しています。

クロスメディアプロモーションの実践

黒部ダムのオフィシャルWebサイトは、新規顧客獲得に向けてのユーザーコンテンツの役割も重要でしたが、広報PRのプラットフォームとしての役割を持たせて設計・制作しているので、Webサイトの機能を最大限に活用することが出来ました。

目標は4年後に観光動員数の回復。Webサイトはクロスメディアプロモーションのハブとしても機能するので、デザインには後々の事も考えて、VIも考慮したビジュアルデザインを取り入れて制作していました。

通年取材の必要性も感じていたので、観光者向けのコンテンツも再構築とボリュームアップに対応出来るよう事前設計していました。

下記がWebサイトのリニューアル公開後に取り組みを予定した、クロスメディアプロモーションの概要です。

  • 春、夏、秋、季節の見どころとなるコンテンツ強化
  • 閑散期の冬をあえてPR映像に取り入れる
  • 観光シーズン中のPR強化「黒部ダムトラベルガイド」
  • VIを統一したSPツール展開
    (ポスター、パンフレット、おみやげラベル、黒部ダム駅構内表示)
  • 現地のブランディングと名物販売員
  • 地元大町市の名物メニュー「黒部ダムカレー」の展開
  • 黒部ダム50周年「トロバス」ビデオコンテンツ制作
  • 黒部ダム公式キャラクター「くろにょん」デビュー

閑散期対策

観光地には特有の閑散期と平均的な閑散期があり、例えば週末や連休はどこも混み合い、季節要因では夏と冬のどちらかだけが繁忙期、閑散期になるというところもあります。
観光客の動員を考えるときに重要なのが閑散期対策で、黒部ダムの場合は冬の間、雪深くて一般の方は立ち入ることができないので、閉鎖しています。
お客さんは来ることも出来ないのですが、逆にそれは見たくても見られない状況でもあります。

大自然の中真っ白に雪化粧した黒部ダムは実はとてもきれいでもあり、この景観をPRに活用しました。
ポスターやプロモーション映像、お土産物のコンセプトとしても活用するという施策を進め、Webサイトでは春の訪れと共に観光公開されるまでの間にも施設の整備状況や映像コンテンツとして公開し、見込み客へのプロモーションを強化しました。

幅広い顧客層に楽しみ方を訴求

観光者向けのコンテンツとして特に強化したのが「黒部ダムトラベルガイド」のコンテンツラインです。特に時間配分が調整可能な個人旅行者層をターゲットとして、観光放水に掛かる虹、ダイナミックなダムの眺望、トレッキングや記念写真の撮影ポイントなどを、実際の観光客にインタビューを行い、楽しい旅の状況を写真とコメントなどで表現することで、老若男女、年齢層、個人、グループ、家族など幅広い顧客層に見どころや楽しみ方を提案しました。

黒部ダム限定の名物を訴求

ここでしか味わえない名物グルメ「黒部ダムカレー」や雄大な黒部湖を運航する遊覧船「ガルベ」、世紀の難工事と言われた破砕帯突破から「難関突破の破砕帯お守り」や冬の間水滴が筍のように凍ることで成長する「氷筍」「日本一涼しい場所」など限定感を訴求するコンテンツを開発し、情報も充実させました。

黒部ダムに行きたくなる仕掛け

観光地の集客で重要なのは「そこにしかない」「そこでしか味わえない」など現地でしか実現しない体験の訴求と体験欲求の動機付けです。

黒部ダムのWebサイトは「旅のガイドブック」並みの圧倒的な情報量と質を兼ね備えることができたので、毎月のアクセス解析でもPV、アクセス数ともに順調に伸びました。

VIやプロモーションのコンセプトを統一したSPツールやイベントなど、リアルプロモーションも徐々に相乗効果を生み始めて、マスコミ取材も増加。大手コンビニなど企業とのコラボ企画なども話題となり、毎年観光客の動員数も増加に転じていったのです。

アクセス情報の徹底的な強化

現地集客のプロモーションでは、「現地に来ていただく」という行動を支援することも大切です。
ところが黒部ダムといえば日本でも屈指の山岳地帯「立山連峰」の中にあり、行きにくい、遠いというイメージがありました。
特に主要なターゲットとして想定していたのが、東京を含む関東圏からの日帰り客なので、「行きやすいし日帰りでも楽しめる」という提案が必要でした。

そこで移動時間の設定や、現地までのアクセス方法、観光コースの開発や所要時間なども念入りに実測と取材を行い「車で黒部ダム」「電車で黒部ダム」などのアクセス情報コンテンツを企画作成しました。

このコンテンツでは、周辺の観光も取り入れて道中もドライブを楽しめるようなアクセスマップを開発するなど、徹底的なアクセス情報強化を行うことで、実際にマイカーで黒部ダムを訪れる客層の増加につながりました。

成功の最大要因は担当者さんと二人三脚で取り組めたことでした。

Webサイトリニューアル公開から4年間、プロモーション戦略の実施とPDCAを繰り返し、結果的に2008年には目標だった観光客150%増加を達成することができました。その後も継続して黒部ダムのWebサイトやSP開発、プロモーション企画などに14年もの長期間携わらせていただきました。私の関わったプロジェクトとしても、現在のところ最長記録となっています。

黒部ダムのWebサイトを企画する上で、目的とする成果を得られるかどうかの判断として、重要視していたのが、担当者さんのモチベーションと行動力です。

減少した観光客の動員回復、その回復目標は少なくとも125%まで押し上げる必要がありました。何十万人もの人をWebサイトにアクセスしてもらうだけでなく、実際に黒部ダムに来てもらわなければならないのです

ECサイトのように直接トランザクションを発生させる一時的な結果ではなく、Webプロモーションとしては、かなり難易度の高い、広報PRプロジェクトを成功させなければならなかったのです。

イベント企画、実施などのリアルプロモーション展開や、SPツールの整備、コンテンツ企画制作など複合的なマネジメントが必要で、我々だけでどうにかできる話しではありませんでした。

担当者さんは、巨大な組織の中で1人、本気でどうにかしようと必死でした。そのために自ら出来る事は何でもするという気概があついほど感じられ、私達のチームも一緒になって全力で取り組もうと思えたのです。

そうして二人三脚で走り始め、クライアント企業の様々な部門の皆様、現地スタッフの皆様、周辺の観光地の皆様、長野県大町市の皆様、鉄道会社様、旅行会社様など大変多くの皆様にもご協力いただき、目標を達成することができたのだと思います。

当時、私達のオフィスに足を運んでこられた担当者さん。
一通り提案を説明して、「やりますか?」と問いかけると、視線を落とさずまっすぐ私に向かい「はい、お願いします。」と答えられました。
「じゃあ、125%で回復だから、どうせなら150%で増員を目標にしましょう。」私がこう提案すると、少し驚いた表情で「わかりました!」と強くしっかり答えられたのを15年経った今でもはっきり覚えています。